効果的なバタフライ効果利用法

さうす



カオス理論でよく使われるたとえに「バタフライ効果」と呼ばれる話がある。
 いわく「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」とかいう、まるで日本の「風が吹けば桶屋が儲かる」をパクったとしか思えないような話なのだが。

 ある現象に対する結果が決定論的に求められるはずの、時間の経過とともに状態が変化する系において、対象となる現象が複雑で不規則な挙動を示すために、結果を(現在人間が持ちえている数値計算手段で有限時間内では、という限定付ではあるが)予測できなくなることがある。これを取り扱うのがカオス理論である。

 つまるところ「世の中、何が起こるかわからんよ」という、いかにも当たり前とも思える経験則を真面目に研究しよう、という分野なのだが、江戸時代の浮世草子「世間学者気質」に紹介された事例

「風が吹くと砂埃が舞い上がり、それが目に入って失明する人が増えることから三味線弾きが増える。すると三味線に張る革の需要が高まるので原料の猫が減り、ネズミが大量発生して桶を食いかじる。新しい桶が飛ぶように売れるので、桶屋は町一番の長者となり、それを妬んだ町人ハチベエは(中略)して、末永く幸せに暮らしましたとさ。おっぺんぱらりのぴゅう(要約)」

に実によく似ている。この現象「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」もその一つだ、というわけである。

 これは、落語家以外で初めてこの経験則を分析した研究者が発見した、日常の感覚とはまるでかけ離れた事例だ。カオスな系においては、初期条件がわずかに異なっただけでその差が時間とともに拡大し、結果に大きな違いをもたらす。なるほど、一見起こりそうもない因果関係が実際には起こるのだという。

 それでは、本事例において、重要と思われる要素を分解し考察してみよう。

1. 北京に存在する昆虫綱・チョウ目の生物飛翔体の持つ4枚の翅(はね)が、周囲の空気を微細に流動させた
2. ニューヨークで暴風雨が発生した
3. 暗黙のアーギュメントとして「北京とニューヨーク間は十分に遠く、相互に直接的な影響を与え合う距離にはない」という社会的通念がある
(ちなみに中国・天安門から世界貿易センタービル跡地のグラウンド・ゼロまでは、Google Earthの定規ツールだと11,002.06キロメートル(6836.36マイル)と表示される)
4. 3.の状況において2.の原因が1.であることから、本事例はカオス的振る舞いを示す
5. 4.にも関わらず、1.および2.の因果関係が観測可能だった

 当学会として注目すべきは5.だろう。

 観測の結果、本当に因果関係を確認できたのなら、それは経験則的に応用が利くということになるからだ。「風が吹けば〜」は途中の因果関係まで仔細に判明している稀有な例であるが、「北京で〜」の事例において、途中経過が何らかの理由でブラックボックスであるからといって、応用する面においてはそのことには問題がない。

 なぜなら、工学の分野では、原因と結果の因果関係は実験によって証明されているものの、両者に働いている法則が科学的にはわかっていないが実用化されている技術がたくさんあるからだ。

 身近な例を挙げよう。冬にセーターを着ると体に「静電気」が発生するが、この静電気がどういう原理でなぜ発生するのか、実は「科学的」に完全には解明されていない。誘電体をこすり合わせたときに帯電する、ということはわかっていても、「なぜ」起きるのかは仮説しかなく明確になっていないのである。
 にもかかわらず、経験に基づいた静電気防止技術は「工学的」に実用化されており、生活の中、例えば乗用車に乗る際に感電による痛みを感じないようにしたり、友達の髪の毛をセルロイドの下敷きで逆立てたりする技術に役立てられている。

 同様に、原理はわかっていなくとも、原因と結果、つまり「北京で蝶を羽ばたかせる」ことが「ニューヨークで嵐を起こす」事さえ判明しているのなら、この限定された状況に限っては応用が可能なのである。

 それでは、具体的にどのような応用が考えられるだろうか。

 まず思いつくのは、戦略兵器としての利用である。発見した学者が気が付いていたのかどうかは定かではないが、北京のある中国とニューヨークのあるアメリカは、外交的には友好を保っているものの、主に台湾海峡の「安全」が原因となって中国海軍は太平洋上に防衛線を引いており、思想・文化的・地政学的にも敵対関係にある。そして、嵐が起こることによってどれほどの影響が起きるのかは、2005年の9月11日からアメリカ南部で莫大な被害を及ぼしたハリケーン「カトリーナ」を例に挙げるまでもない。

 中国で蝶を飼うだけで世界経済の中心であるニューヨークの活動にダメージを与えられるのなら、それは戦略核に匹敵する恒常的な政治的圧力として機能するだろう、と考えられる。現在は一般に荒唐無稽な話と受け取られているが、水面下では北京における飼育状況に関する、激しい政治的やり取りが首脳会談ですでに交わされている可能性がある。

 そしてもし、今後東京で嵐が起こせる場所が新たに見つかったなら、すぐさま日本政府による必死の蝶狩りが現地で行われることになるだろう。あるいは、北朝鮮で嵐が起こせる場所をアメリカはとっくに把握していて、いつでも災害が起こせるように蝶に訓練を仕込んでいる最中なのかもしれない。

 さて、ここまで読んだ読者の中には、疑問を感じた諸兄があるかもしれない。「あくまで予測不能であることのたとえで、嵐が起こるのは別にニューヨークでなくともよかった。今は反省している」という反論である。
 たしかに、嵐が起こるのはニューヨーク“だけ”とは限らない。前段までに述べたことが完全に棄却されるわけではないとはいえ、ニューヨークにも嵐が起きるが、ほかの地域にも同様に嵐が起きる、と考えることには不自然な点はないだろう。
 ではその場合、どういうことになるだろう? 大変なことになるのだ。蝶の羽ばたきは毎秒20数回程度と言われているから、あっというまに

「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」
「北京で蝶が羽ばたくと、ロサンゼルスで嵐が起こる」
「北京で蝶が羽ばたくと、東京で嵐が起こる」
「北京で蝶が羽ばたくと、パリで嵐が起こる」
「北京で蝶が羽ばたくと、平壌で嵐が起こる」

……と続いて、しまいには

「北京で蝶が羽ばたくと、世界中いたるところで嵐が起こる」

というところまで行き着いて農業をはじめとする経済活動が破綻、世界恐慌となる。北京おそるべし、である。

 なお、2006年3月30日付で、下記のような記事が報じられている。

「北京:有害な蛾が大量発生、政府大慌てで五輪ピンチ」
(サーチナ・中国情報局
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=0330&f=national_0330_003.shtml)

 記事によると「北京市では北米原産の蛾の一種で害虫として悪名高い『アメリカシロヒトリ』が大発生している」そうなのだ。蝶ではなく蛾ではあるが、よりによって“アメリカ”シロヒトリである。
 もはや偶然とは思えない一致である。9:11同時多発テロがアメリカ側の自作自演だという説があるように、この件も自然災害にみせかけたCIA側の陰謀ですらある可能性がある。事の真偽は定かではないが、少なくともニューヨーク市民は警戒する必要があるだろう。

 アメリカでは何年後にハリケーンに注意しなくてはならないのだろうか? 2005年はカトリーナをはじめとしてリタ、ウィルマという近所で評判の高い3姉妹が、立て続けに癇癪を起こした当たり年だった。女所帯でひとり肩身の狭いお父さんは大変……もとい、しかし、中国で2005年に蝶が大量発生したというニュースは、残念ながら確認出来なかった。

 もし相関が認められれば、応用が可能であることの第2の実例になったに違いないのだが、ニュースが確認できなかったからといって、関連がないと即座に否定される反証になるわけではない。「発生した年にすぐ影響があるわけでは無い」ということが言えるだけだ。この分野については、更なる研究の進展が待たれる。

 あるいは、これはあくまで筆者の推測に過ぎないことを踏まえていただきたいのだが、なにせ事が中国共産党のやることなので、

・本当は2005年にすでに発生していた(させていた)が、バタフライ効果の真実を知られたくない事情で情報流出を抑えていた(五輪で被害を各国に見せてアリバイ)
・(時期はわからないが)ハリケーン被害が過去の蛾発生による影響だと中共側は既につかんでいて、2006年では意図的に発生させた(報道自体がアリバイであり自作自演)
・政府が厳重に管理・飼育していた大量の蛾が逃げ出した(つまり“害虫の大量発生”報道に見せかけた、“バタフライ効果兵器の燃料漏れ”)
など、考えられなくもない。

 ところで筆者は本論を研究する過程において、ある一つの事実に気が付いた。机上理論学会論客としていささかリスクを犯しつつ、それを公表に踏み切ろうと思う。
 2005年と言えば、日本でも台風14号が猛威を振るった年である。カトリーナほどではなかったにせよ、14人死亡、3人が行方不明(Wikipediaにて調査)、経済的にも多大な打撃を被った大きな災害であったことは記憶に新しいだろう。

 日本では“台風14号”と呼ばれているこの台風、国外的には台風委員会によってアジア名がつけられている。台風14号の名前はナービー。その意味の由来は、反日政策盛んな某国のある朝鮮半島。朝鮮語で「蝶」。

 もはや偶然とは思えない。時折ニュースで報道される、一部市民が度々起こしている反日デモの際に、彼らが必死になって地面に転がりながら両手をバタつかせていたのは、ほかならぬバタフライ効果を狙ってのことだったのだ。

銭形警部「本論を追ってて、とんでもないものを見つけてしまった。どうしよう」
(筆者は朝○総連によって消されました)





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