自爆テロの対策と傾向

渡辺ヤスヒロ



 世に紛争の種は尽かないと言うが、まさに2003年は激しい年となったことは誰も知ることである。イラクにおけるフセイン政権打倒を掲げて大儀の無い侵略を行う米軍はその戦力差からわずかな期間に首都を陥落せしめた。独裁政治が戦争と比べてどう悪いとか、結局イラクの人達にとってどうだったのかとか、国際情勢として何が正解だったのか、歴史的に考えてどうなのかとか、人によって考えも思惑も様々であり今ここであえてそう言ったことを論ずる必要はないだろう。結果として戦争は行われたのだし、その余波は我々平和慣れした日本人にも届いて来ている。この国は国民が何人拉致されようと政治的な問題があれば取り合えず揉み潰したりしてきたとしても、さすがに外交官が堂々と襲われ殺されたりすれば表沙汰にせざるを得ない。平和維持に行くことになった自衛官の方々の装備も自然強化されていくようである。しかしいくら協力な銃火器や鎧兜を身にまとったとしても果たしてあの紛争地帯で生き残ることができるのであろうか。自称世界最強の米軍ですら手を焼き被害が続くテロリストに対抗できるのだろうか。

イスラム原理主義、フセイン派残党、アルカイダ…。組織なのかどうかも怪しい彼らは現在は大雑把にテロリストと呼ばれている。ゲリラじゃダメなのか?とか色々思うこともあるが彼らの活動は全てテロリズムとして扱われている。まあテロリストがテロをしていると言えば、もう言い訳の仕様がない理不尽な悪事なんだなと言う印象があるから悪役扱いする側としてはそれで良いのだろう。これが侵略軍に対するレジスタンスとかだと雰囲気も結構変わるのだがまあこの際テロリストとする。
彼らテロリストの最近の流行と言うか活動の主(ある意味花形と言っても良い)は、自爆テロである。20年前なら爆弾を仕掛けたりロケット砲を撃ったり狙撃したりと言ったある意味地味な活動で、テロリストが表に出ることは無かった。自宅に引きこもってパイプ爆弾を作り現地を下調べして結局中止したりする彼らの活動の主は実は現政権へのグチの言い合いだったり。血の気の多い若い奴らは角材を持って学生運動したりもするけれどテロと呼ばれたわけでは無かった。話がずれたが、現在のテロの主役は自爆テロである。言っておくが自爆するとテロリストも死んでしまう。テロリストの目的はテロによる政治的な発言であって自殺ではないはずだ。するとなぜ自爆テロはこんなに持て囃されるのだろうか。

殉死と言うのはどこでも美化されるだろうし、そうした教育もされている可能性は高い。誰かのために、何か崇高な目的のために死ぬというのはいつ流れ弾に当たって死ぬかもしれない場所に住んでいれば当然考えることである。しかし、それだけの理由で自爆テロが持て囃されるわけではないことを我々は知っている。
自爆テロは効果的なのだ。何しろ爆発であることから目標にある程度まで近づけば良いし、人が操作するため時限装置の故障等には無縁。ライフルやマシンガンを持ち込むことが難しい場所でも腹マイトなら可能と思われる。爆弾の操作はそれほど複雑ではないと思われるため、知識や経験が豊富なテロリストである必要がない。ばれたとしても自爆すれば実行犯から情報が漏れることはない。となかなか利点が多かったりする。
そんな効果の高い自爆テロに良い対策はあるのだろうか。
車で突っ込まれないように何重にもコンクリートの壁を作り、1km先からでも破壊できる無反動砲を装備したりしても近づく車や人がテロリストであるかどうかが見分けられなければ意味はない。無差別に現地民を近づけないようにしていれば虐殺と同じである。

派遣される自衛隊員の方のためにも長くなったがこうした自爆テロに対抗する手段を考えてみたい。
・テロの標的にならないようにする。
・テロが行われても被害が出ないようにする。
テロリストを元から断つという米軍方式は一見良さそうに思えるが結局反発を避けることはできない。期間も人員も限りがある場合には尚更とるべき手段ではないだろう。

 標的にならないようにするとはどういうことか。守りを固めてテロ対策は完璧にするという意味ではない。そんなことをすればテロリストの射幸心を煽るばかりであろう。逆にテロリズムから目を背けられるようにするのである。守りを緩めるとかではなく、政治的意味が薄くテロを行っても仕方が無いと思わせるのだ。偉い人もいない、壊しても仕方が無い、そんなバブル期の箱物のような施設であればテロリストのいつかやるリストから外れる可能性もある。
 しかしすでに米軍と同等に扱われていると思われる自衛隊がテロリストから御目溢しをされるとは思えない。ここはテロの被害を最小にするためにテロが行われることを前提に考えるべきだろう。

 爆弾を持って近づき、爆発させる。自爆テロ以外にこの行動を取るものに覚えがある人はいないだろうか。そう、ボンバーマンである。惜しいけど違う。ボンバーマンは自爆はしない(たまにするが)。アクションゲーム系の雑魚キャラである。ささっと近づいてきてドカーン。大抵はその体の大きさに反して爆発はダメージが大きく非常に迷惑な存在である。代表的なところでは任天堂のゲームに良く出るボム兵だろう。彼は黒い球状の体に足が生えているだけで頭上に導火線がついている。しばらくうろついて立ち止まり震えだしたり点滅したりして自爆する。
 これだけ自爆テロに似ているのであれば対処方法も同じと考えて良いだろう。そう、ゲームには何らかの攻略法があるのである。
 取り合えず任天堂でボム兵が出てきて活用されるゲームと言うことでスマッシュブラザーズを題材にしてみよう。このゲームは対戦アクションゲームであり、ボム兵は使用キャラではなくランダム要素としてフィールドに突然出てくる。もちろん離れて逃げることも可能だがつかんで投げることも出来る。最終的には登場後一定時間で爆発する。下手に逃げていると敵キャラに投げられて大ダメージを食らうこともある。このゲームでのボム兵に対する正しい対処法はつかんで敵から離れて爆発しそうな頃に敵に投げつける。又はフィールド外の安全な場所に投げる。である。なるほど、言われてみればもっともだ。自爆テロリストが爆発しそうになったらすかさずつかんで敵に向かって投げれば良かったのである。その爆発で敵が大ダメージを食らえばおそらく自爆テロも効果薄しとして減っていくであろう。

ドラクエにおけるばくだん岩、FFにおけるボム、ポケモンにおけるビリリダマ等も同じ様に自爆するキャラクタである。彼らに対抗する手段は素早く倒すことだが、得られる経験値やアイテムのコストパフォーマンスは良くない。良い対処法はやはり「逃げる」であることは明白である。
日本人も以前は神風特攻隊や人間魚雷回天等の自爆攻撃をしていたが、最終的にそれが効果薄だと気付いているため現在は行われていない(一部鉄砲玉と呼ばれて残っている節もあるが)。ボスキャラにメガンテが効かない理由を考えれば理解出来るからだ。





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