電気オタクはろりぷにアンドロイドの夢を見るか?

東山錦一



はじめに

 世間では相変わらず「ロリコン」といえば「変態野郎」「人間のクズ」という見方がなされているようである。目をネット上のオタク界に転じてみれば、いるわいるわ「ロリ」な人々。「やっぱりオタクは人間のクズなのか?」という問いはさておき、どうしてオタクにはロリが多いのであろうか。 さらに観察してみると、高学歴者、特に旧帝大出身者/在籍者にロリ率が高いような印象を受ける。これは事実だろうか?そうだとすればなぜ?
 これらの疑問に答えるのは容易ではない。本稿では、まず準備段階として「ロリとは何か」ということについて考えてゆきたい。


用語について

 オタク界でいう「ロリ」は、世間で言うところの「ロリコン」とは少しく異なるし、ナボコフの『ロリータ』で提唱された概念とも異なる。まずはこの点を整理しておこう。
 語源となった『ロリータ』であるが、そこで述べられている考えをまとめると以下のようになる。「少女(九歳から十四歳とされている)のうちの*一部*は、年齢の大きく離れた男に対して人間らしからぬ、ニンフのような魅力を示すことがある」
 世間で使われる「ロリコン」も、当初はこの線に沿って「中年男が少女に惹かれること」といった意味であった。しかし現在では、幼女に対するフェティシズムも、単なる童顔趣味も、全て「ロリコン」で片付けられてしまい、意味がぼやける傾向にある。
 オタクの用いる「ロリ」はどうか。これを定義するのは困難なのだが、とりあえず「さくらちゃ〜ん♥ はにゃ〜ん...」とか「はづきっち萌え〜」とか言ってるような人、あるいはそのような人が向かうキャラクター(虚構/実在を問わない)のこと、としておこう。


ロリ的要素をめぐる議論

 これまで、オタクの間で「ロリ」はどのようなものだと考えられてきたのであろうか。この点についてのヒントとなるのが「ロリ度チェック」の類である。チェック項目には、制作者の「ロリ」定義の試みがあらわれているはずである。
 これらのチェックはたいてい、「リボン」「ふりふりひらひらな服」「スクール水着」等の、萌え要素をカウントアップするようになっている。
また、「年上と年下のどちらが好き?」といった問いが設けられていることも多い。
 だが、いくら要素を並べてみても、いっこうに「ロリ」の本質に近づいていない感がある。なぜなら、要素それ自体に意味は無く、あくまでも関係性において意味を持つようになるものだからである。言い換えると「おねーさんがリボンをしているのではダメで、ロリな少女がリボンをしているのでなくてはならない」ということだ。これら要素はロリキャラとの組み合わせにおいてのみ、萌え誘発力を発揮する。あたりまえのことだが。(例外的に、ロリにしか現れない要素「ぷに」というものが存在する。しかし、「『ぷに』こそがロリの本質だ」という主張をしてみたところで、うなずく人はほとんどいないだろう)
 実際、上のようなチェックに対する批判として、「ストライクゾーンの広さを判定しているだけで、度合いの深さを判定していない」ということが指摘されている。それは確かにそうである。かといって、萌えキャラの年齢層によって判定する試みも、成功しているとは言い難い。要素にせよ年齢にせよ、個人の趣味に属するものであって、その人が「どのようなロリが好きか」もしくは「何をもってロリとみなしているか」ということは示しているものの、「ロリであること」には関係ないからである。

 ちょっと話が脇にそれるが、ここまでの議論によって、世間でよく言われる「ロリコンは成年女性とのコミュニケーションが出来ない奴が、コントロールしやすそうな少女に向かっているのだ」というステロタイプで皮相的な見方は誤りであることが明らかだ。「そのことと『ぷに』との間に何か関係あるの?」などと問うてみればよい。まあ中にはそういう人もいるだろうが、それはその人の趣味であって、「ロリ」とは関係ない。


ロリが存在する位置

 さて、要素はロリの本質ではないとはいっても、それらを全てはぎ取ってしまえば、ロリという存在が消えてしまうということもまた確かだ。ロリの本質は、ロリな人々が共通して持つもの−ロリな人々をロリにしている原因−が個々の嗜好−萌え要素−へと分化するその点に存在するはずである。別の捉え方をすれば、ロリキャラは「本来的にロリキャラ」として単独で存在するわけではなく、ロリな人との関係性において存在する、ということになる。
 少々直感に反する、と思われる方もあるかもしれない。だが、この考えは「ロリな人にしかロリキャラをうまく描くことはできない」という事実とよく整合する。
 ではロリな人とロリキャラとの関係性とは何か? ひとつの案として「保護すべき対象」というものを出しておく。批判も多いかと思う。「『萌え』というのはそんなもんじゃない」とか... この点については今後検討してゆきたい。

 ところで、著者が常々疑問に思っているのが「ロリ」と「エロ」の関係である。ロリキャラを扱ったエッチな同人誌/同人ソフトというものが多く存在しているようだが、ロリ界においてこれらの需要はどれほどあるのであろうか?ごく少数だろうと思うのだが... この点を押さえておかないと、今後ロリ−ロリキャラの関係性を探ってゆく上で問題となるのでなんとかしておきたいところである。ご自分をロリと認識していて、かつ、著者に協力してやろうという奇特な方には「あなたはCCさくら(具体的なキャラクター名にはお好きなものを当てはめて頂きたい)のエッチな同人誌が欲しいですか?」という質問に対する回答を hgsym@md.xaxon.ne.jp までお送り頂きたい。十分な回答数が得られれば、次の機会に発表したいと思う。


参考文献
『親族の基本構造』レヴィ=ストロース



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