怪しい老人

杉山晃一




1.はじめに

 近年,我が国は益々高齢化が進んでいる。昔に比べて寿命が延びたことが原因である。この調子で行くと近い将来、老人:若者の比率は5:5を軽く上回るだろう。本論文では、来るべき高齢化社会の世相を鑑み、その問題点として痴呆、寝たきり、経済的逼迫について挙げ、これらの解決策について論じることにする。

2.問題点
 高齢化社会へと至る過程と問題点を図.1に示す。

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    │【要因】  │ ┃【国民の高齢化】 ┃ │【問題点】 │
    │・出産率低下├→┃・コギャルの絶滅 ┠→│・産業の衰退│
    │・医療の進歩│ ┃・プー老人の蔓延 ┃ │・経済的逼迫│
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          図.1 高齢化社会への過程と問題点

 高齢化の要因は大きく分けて出産率の低下と医療の進歩の2つである。前者は、我が国において結婚しない、或いは結婚しても子供をあまり作らない傾向が強いことを示唆している。後者については、寝たきりになろうが痴呆になろうが、ありとあらゆる医療処置が施されるため、そう簡単にはお迎えが来ないという現状を示唆している。元来、「老人」という言葉には、老い先の短い、はかなげなイメージがあった。
しかし、こういう既成概念は排除していかねばならないのである。

 高齢化社会の世相について鑑みると、まず、時代をリードする若者層即ちコギャルがいなくなることが予想される。これによって産業はその拠り所を失い、衰退化の一途を辿ることになる。次に、定年を過ぎて暇を持て余す”プー老人”、つまり「いい歳こいてふらふらしている古いもん」が蔓延することも予想される。これに伴い、国民年金支給の制度は崩壊し、経済的逼迫という問題が生じる。

 このまま手を拱いていては、国力の低下は必至である。我が国の存亡に関わる大問題である。そこで、来るべき高齢化社会におけるこれら諸問題に対する解決策について、次章3.で論じることにする。

3.解決策〜趣味に走ろう〜
 人は誰しも何らかの物事に対し、興味を持っている。対象となる物事に対して、知識が異常に豊富になったり、関連グッズを集め出したりするようになった人のことを”趣味に走った人”、”マニア”、或いは”怪しい人”と言う。”趣味”は人が生きていくための原動力であり、良かれ悪かれ人生を左右する程の力を秘めている。しかも、これは個人レベルに留まらず、社会全体においてもその威力を発揮するものなのである。このことを糸口にして、高齢化社会の問題点解決の為の指針について以下に述べることにする。

 趣味には多様なジャンルが存在する。それが非常にマイナーで且つ一般的で無い場合、そういう趣味を持つ人に対して社会は非常に閉鎖的である。従って、このような人は、学校や会社等の公的な集団に属している時には、出来る限り趣味を表に出さないようにするのが無難な生き方である。○○や○○○や○○○○○○○注1のことを話してしまったが最後、もはや人間扱いされなくなるかもしれないからである。

 しかし、長きに渡って欲求が満たされない場合、その鬱憤はいつか爆発することになる。テレビの民放が2局しかないような地方でのロックコンサートが異常に盛り上がり、死人まで出てしまったりするのがその顕著な例である。だから無理をしてはいけない。時と場所を選んで趣味に走るようにしよう。趣味に走った怪しい人が集まって巨額の金銭が流通する所と言えば、そう、”即売会”(コスプレも可)注2である。定年を過ぎて暇になったら、それまで培ってきた趣味を即売会で思う存分に生かせば良いのである。同人誌や同人ソフトの世界は,高齢化に伴い,職人気質の”怪しい老人”達の活躍の場となるだろう。原稿描きには緻密な作業が必要となるから、手先を頻繁に使うことになり、痴呆を防ぐ効果がある。また、即売会の会場でしか手に入らないような非常にレアなブツを手に入れるため、足腰はより強靭になり、寝たきりになっている暇なんてないのである(注3)。

 また、学校や会社は即売会の日には休みにして、参加を義務付けるようにすれば、若いうちから自分の趣味にあったジャンルに慣れ親しむことができる。何よりも自分と同じ趣味を持った人間との交流ができるようになり、友達のいない寂しい人生や寂しい老後を過ごす人も減少すると考えられる。人の出会いの場が増えることにより、結婚・出産の頻度が増え,高齢化に歯止めを掛ける効果も期待できる。

 ”怪しい老人”の増加に伴い”プー老人”および寝たきり・痴呆の老人は激減し、絶滅したかと思われたコギャルも西表島辺りで発見されることになる。教育や産業における即売会の推進に伴い、我が国のGNPは確保され、経済の活性化が見込まれる。
このようにして高齢化社会の諸問題は回避できるのである。

4.まとめ
 日頃から、一般の人に言えないような趣味があって、社会のしがらみからそれを前面に出せないでいる人は膨大な数になるであろう。しかし、くじけてはいけない。明日の為に今日の屈辱に耐えるのだ。それがマニアだ。より怪しい老人となる為、日頃の精進を忘れないようにしよう。

謝辞
本論文の執筆にあたり、大変貴重な助言を頂きました、加藤法之さん、mochaさん、Yackyさんに感謝致します。
(コギャルなマニアの老人が将来の日本を救うことになるのかも知れない。)

注1 ○○...にはあなたのお好きなジャンルの専門用語(例:”綾波”,”ウテナ”,”キングマイマイ”,”フランクザッパ”等)をあててお読み下さい。
注2 ここでは特にアニメ・コミック等のジャンルを仮定し、老人を含め日本の総人口の約3割(数値に根拠無し)がこの手の趣味に走るものとしている。
注3 但し、原稿執筆やプログラム作成に精魂こめたりとか、徹夜で会場入りしようとしたりして、お迎えがきてしまう老人が後を絶たなくなるかもしれない。その場合は、大往生ということで.....m(..)m



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