「ゴキブリ」はゴキブリか?

加藤邦道



 ある日見知らぬ黒い昆虫を見つけたとします。色々と調べた結果、その昆虫の名前は「ゴキブリ」だということが分かりました。しかしそれは現実に存在するゴキブリとはちょっと違うような気がします。ではこの「ゴキブリ」はゴキブリなのでしょうか、それともゴキブリではないのでしょうか?そしてその理由は?尚、ここでは生物学的解剖学的な規定は無視し、主に心理学的分析哲学的にみた場合について2〜3人の人の意見を参考にして考えています。

ゴキブリではない派
 「ゴキブリ」がゴキブリの形をしていないのなら、脂ぎっていないのなら、あの敏捷さを持ち合わせていないのなら、それはゴキブリとは似ても似つかない訳でゴキブリではないと断言できます。まあそこまで極端に違っていなくても最初の印象として「ゴキブリではない」と思われれば、その人にとってその昆虫はゴキブリではないと認識されるでしょう。ゴキブリだと言うのなら、その昆虫を発見したらすぐに殺虫剤で殺してしまうのですか?

ゴキブリに違いない派
 みんながそれを「ゴキブリ」と認めているのなら、それはやはりゴキブリでしょう。これは命名法の問題であって、ゴキブリと「ゴキブリ」とではその意味するものが微妙に違うと思われます。例えば「青」という色について考えてみると、その中には明るい青、暗い青、ガラスの青、燃える青など沢山の「青」が存在する訳ですし、信号の「青」なんて緑じゃないですか。そしてその昆虫がゴキブリであるという情報を手に入れた途端にそれはゴキブリとなる筈です。そうと知らなければ平気で素手で触れても、知ってしまってからでは触る気になれないでしょう。


 結局、程度の問題なのでしょうか。みなさんはどう思いますか?私?私はゴキブリだと思いますけど、それに恐怖を覚えない限り殺すことはないでしょう。



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